5. 事件へのプロローグ

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「でもさ、その人がすっごーく思いつめてたならとっさに自殺してもおかしくないんじゃない?」 清水の言葉はもっともで、追い詰められた人間は自殺はたまた殺人など、普通はできないことを平気でしてしまう。そしてそれは、自分自身を守るためであることも少なくない。 もちろん、本当の悪意というものを持っている者もいるのは違いないが。 「じゃあまりりんに聞くけど、ああ死にたいって思った時ほんとに死ぬ?」 成宮の視線が清水を射抜く。蛇ににらまれた蛙のように、清水は固まってしまった。 ――やっぱり刑事さんなんだなあ。 成宮は軽い人かと思えば、ちゃんと仕事をするれっきとした刑事だった。清水はうーん、としばし考えたあとでポツポツと呟いた。
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