5. 事件へのプロローグ

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「……親が悲しむかなーとか、友達にもう会えないんだーとか、思うと死ねない、かも……。いざとなると勇気出ないし……」 今まで死にたいと思ったことがない清水には、追い詰められる人の気持ちが分からない。 そのため想像するしかないのだが、本人の苦しみなど本人以外が分かるわけがない。いくら励まそうともそれがそのまま苦しむ本人に受け入れられるかは分からないものだ。 「しかも、就職活動で何かあったならまだ分かるけど、その子、勝ち組なんだよ」 「勝ち組?」 「合川商社知ってるでしょ? ほら、ここからも見えるでっかいビルの」 やや遠目に見える、ビル群のなかでもひときわ巨大な建物を成宮は指差した。知らない人がいるとすれば子供か老人ではないかというほどの知名度を誇る会社だ。 「知っている」 「私も」 そんな会社を鷲尾と清水が知らないはずはなかった。
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