8. 一人の女と男

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8. 一人の女と男

 夜、一人店内に残った合川(あいかわ)美代(みよ)はドアが開く音に気付いた。 「すみません、今日はもう閉店で……、公太」 閉店間際に来た客かと思えば、相手は婚約者の馬場(ばば)公太(こうた)だった。いつものようにスーツを着こなし、爽やかな笑顔でドアを後ろ手に閉める。 「お疲れ。まだ帰れそうにない?」 「あと30分はかかるわ、待っててくれたら一緒に帰れる」 「じゃあ待つよ」 「ありがとう」 合川の言葉を聞いた馬場は笑いながら近くにあった椅子に座った。彼女はそれを横目に棚の鍵を締めたり、窓の確認をしている。
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