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アリバイ確認をしてこい、という言葉は省略したが田浦は分かっているようで、短く答えると部屋を出ていった。
閉まるドアの音を背中で聞きながら成宮は別の質問をはじめる。
「そういえば、最近お金の使い方が荒いんだってね。何かいい仕事でもあった?」
「ええ、まぁ。もうすぐで、もらったお金がなくなりそうなので、また働くつもりです」
「そっか」
いかにもいい大学生、というふうに振る舞う野崎に対して成宮は姿勢を崩さない。
「……アリバイが確認できるまでは、ここにいてもらうから」
その台詞に野崎は口端をゆがめ、笑いながら頷いた。
「分かってますよ」
この返事の意味を、成宮は後ほど知ることになる。
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