12. 取り調べ

6/6
前へ
/179ページ
次へ
アリバイ確認をしてこい、という言葉は省略したが田浦は分かっているようで、短く答えると部屋を出ていった。 閉まるドアの音を背中で聞きながら成宮は別の質問をはじめる。 「そういえば、最近お金の使い方が荒いんだってね。何かいい仕事でもあった?」 「ええ、まぁ。もうすぐで、もらったお金がなくなりそうなので、また働くつもりです」 「そっか」 いかにもいい大学生、というふうに振る舞う野崎に対して成宮は姿勢を崩さない。 「……アリバイが確認できるまでは、ここにいてもらうから」 その台詞に野崎は口端をゆがめ、笑いながら頷いた。 「分かってますよ」 この返事の意味を、成宮は後ほど知ることになる。
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加