16. 交差する視線

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「あちゃー……。出てきたら渡そうかな」 そう言って写真を取り出してみると、ドレス姿の蘇芳が微笑んでいる。 ――こんなに綺麗ならストーカーもされるよね。 同意してはいけないのだが、したくなるような美貌の持ち主だ。しかも宮地によれば性格もいいらしい。だがそうなるとますます謎だ。自殺でないことは明らかだが、犯人は分からない。 「……ん?」 清水は穴があくほど見つめた写真にあるものが映っていることに気がついた。それはつい最近も見たような、あれ。 「えーと、どこで見たんだっけ……ついこの間だよ。そうそう、確か信号――」 そう呟きながら振り返ったときだった。廊下の壁には隙間がありそこから階下、1階が見える。そちらに自然と視線が向く。 電柱の影にひそむソレをみた清水は悲鳴にならない悲鳴をあげて、2人が消えた角部屋へと走っていった。
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