17. 不器用な優しさ

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2人はリビングにあたるスペースへと出た。物はそのままで、部屋は暖色系のものが多く掃除もされていたようできれいに整理されていた。 「そのとき考えられていた密室にする方法が使われたかもしれないって思って。それに必要なのが糸だけ」 「どういう糸なんだ」 「そこまでは分からないんだよね。とりあえず裁縫道具探したらどうかな」 「分かった」 そう説明した成宮は奥の方にある部屋へ鷲尾を連れていく。 ドアをあけたその部屋には、机やクローゼット、ベッドがある。蘇芳個人の部屋のようだ。机も整理され、大学で使うらしい教科書の他に小説の本も並べられていた。キャラクターものの飾りもおいてある。 「それから、黒い手帳を持ってるのを見かけた人がいてね。いつもと違うから覚えてたって」 成宮がそう説明をしたところで途端に玄関のチャイム音がけたたましく鳴り響いた。その直後には必死そうな女性――清水の声が2人の耳に入る。
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