第5章 不審者

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第5章 不審者

「おじいさまに縁の深い方ですかね。高名なお医者様でしたから」 お坊さんは頷きながら言った。 この大勢の弔問者の中に、人間の形をしているが、 人間ではない何かが紛れているのは事実。 だがその人物が具体的に、この中の誰なのかは特定できないという。 廊下の椅子に腰掛け、震えている私に声を掛ける人物があった。 突然のことで、思わず叫んでしまった。 「ど、どうしたのっ!?」 ヨシミ叔母さんだった。 私は叔母さんと、弔問客で溢れかえる部屋を、 襖の隙間からこっそりと見ていた。 そして見慣れない人物がいないかを叔母さんに聞いた。  だが叔母さんの答えは予想通り「ほとんど知らない人」とのことだった。 祖父は私が想像する以上に偉大な人なのだ。 親族が計り知れないほどの交友関係が存在している。 「じゃあ、おじいちゃんが亡くなる前でもいいんですけど、 変わった人が訪ねて来たりとか……。何かありませんでしたか?」
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