第1章 奇跡

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院内では気丈に振舞っていたが、電話越しに祖父の声を聞いた瞬間、 堰を切ったように感情が爆発し、涙が溢れ出た。 これから先、この悲しみに耐えていけるのだろうか。 耐えられたとしても人の死に慣れてしまう人間にはなりたくない。 長い時間、祖父と話し込んだ。話しも涙も尽きなかった。 祖父は電話の最後にこう言った。 「今度、帰ってきたら、ユリちゃんに良いものをあげるから」 「良いもの?」 「うん。奇跡をあげる」 「奇跡?」 「でもあくまでそれはお守りだから、できれば使わないように……」 しかし、祖父から直接「奇跡」を受け取ることは出来なかった。 私が会いに行った時には、すでに祖父はこの世を去った後だった。
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