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本通夜は盛大に行われた。
祖父の知人友人はもちろん、昔の医療関係者から患者まで、様々な人物が訪れ、
過疎地の町には珍しく、家の外には長蛇の列が出来ていた。
私を含め、親族は弔問者への対応に追われることになった。
式が一通り終わると、私は通夜振る舞いの席にお坊さんを案内した。
そのお坊さんとは、小さい頃から顔馴染みで、会うのは久しぶりだった。
私のことは、親族から聞いていたようで、
「お医者様になられたとは、立派なことです」と、微笑んでくれた。
席に案内し、私が離れようとすると、お坊さんはこんなことを口走った。
「お気をつけ下さいね」
「何がですか?」
「弔問客の中に、変わった方がお一人いらっしゃいますので」
「変わった方?」
「この世の者ではない、何かです」
「……」
「お気をつけ下さい」
お坊さんは、深々と一礼した。
私は何も言えなかった。全身に鳥肌が立った。
私のポケットのハンカチの中には、おそらくこの世の物ではない、
何かが挟まっていたから――。
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