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甘える事を少しだけ、許せる場所なのかもしれない。なにせここは居心地が良くて、温かいから。
「ランバート、ここでは少し甘えていい。仕事を離れれば、少しくらい聞いてやれる。訴える事も大事だ」
「そんな事…今更難しいです」
ひねくれてしまったから、そんなに素直にはなれない。訴えてこなかったから、今更どうしていいか分からない。甘えるなんてしてこなかったから、どうすればいいか分からない。
思い返すととても不器用だ。今更気づくなんて情けない。思わずしょぼくれていると、ポンポンと頭を撫でられた。
「まぁ、少しずつ。とりあえず今は、我が儘も甘えも許す。俺も、世話になったからな」
甘やかすように優しい笑みを見て、ランバートもふわりと笑った。気持ちよく瞳を閉じると、不安も苦しさも消えている。喉に詰まるような苦しさも消えていた。
「ファウスト様」
「どうした?」
「…今夜も、一緒に居てくれますか?」
昨夜はとても心地よかった。苦しかったのが途中で消えた。香る肌の匂いに安心したんだと思う。耳に触れる鼓動に、落ち着けたのだと思う。
ファウストは目を丸くして、次には楽しそうに笑って「あぁ」と言ってくれた。
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