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「薬は飲める? 粉だけど」
喉に引っかかりそうだけれど、仕方がない。薬包を開けたファウストが側にきて、薬を少量の水に溶かし込む。蜂蜜とレモンを入れたものだ。
「これなら飲めるだろ」
「あ、その手があった!」
粉薬が苦手なウェインが、ものすごく悔しそうに言う。それにほんの少し笑みを浮かべながらも、ランバートは薬を飲み込んだ。確かにこれなら飲み込めた。
「暖かくして寝て。ファウスト、後を任せるよ。解熱の薬はここに置いておくから」
「あぁ、分かった」
そんな事を言って、エリオットとウェインが出て行く。そこでハタと状況が確認できた。ここは、ファウストの寝室だ。
「あ…」
なんて言えばいいのだろう。この部屋に、この人はあまり泊めたがらないのは知っている。迷惑じゃないか心配になると、ポスンと頭に手が置かれた。
「変な気遣いをするな。治るまでここにいろ」
穏やかに言った人は、許してくれる。申し訳ないような、嬉しいような。複雑な気分だった。
「幸い、明日からはあっても書類の整理だ。大きな仕事はない。休め」
声が出ないのが、もどかしい。「すみません」とか、ちゃんと伝えたいのに。
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