寂しい

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 溜息をつくファウストに、ランバートは申し訳無く頷く。多分、そういう理由だったんだ。 「嫌なんです、俺。誰かが俺のために泣くのを見るのが。煩わせたくないって、思うんです」  黒い瞳が悲しんでいる。この人にも、こんな顔はして欲しくない。言ったことを後悔した。けれど、撫でてくれる手は優しいままだ。 「お前を案じて泣くことも、親ならあるだろう。だが、それすらも奪うのは親不孝だぞ」 「え?」  真剣な目が見下ろす。伝えたい事を伝えようとする目だ。それを見上げながら、ランバートは困った顔をしていた。 「お前を思って泣く事は、お前を愛しているからだ。隠されるよりも、信じて打ち明けて貰いたいと思っただろう」 「貴方も、そう思いますか?」  問いかける。それに、ファウストはゆっくりと頷いた。 「だから少し、安心した」 「何がですか?」 「風邪をひけるほど、安心してもらえたのだろうかと」 「え?」  思わぬ言葉に驚いて見つめる。困ったように笑う顔は優しくて、少し悲しそうだった。 「それだけ、気を抜いてもいいと思えたんだろ。倒れても大丈夫だと感じたんだろ。そうでなければ、お前は今でも無理をしていたんじゃないのか?」  そうなのだろうか。考えて、そうかもしれないと思う。     
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