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「第五師団か。奴らには少し言わないとな。物の扱いが雑なのは否めない」
「まったくだよ。それに比べて第一師団なんて、本当に完璧。定期的に自分たちで磨いてるね」
「奴らは少し几帳面過ぎるくらいだ」
「アシュレーがグリフィスに教えてあげれば、きっと上手にやれますね」
「…その前に血を見るよ、多分」
コロコロと笑うオリヴァーだが、ウェインはものすごくぐったりして言う。
第一師団を預かるアシュレー・クレネルとグリフィスは、性格的に真逆だ。
緊急時はごちゃごちゃ言わないが、この二人合わない。当人達もそれを自覚しているから、必要以上に関わりはしない。仲が悪いわけじゃないのだが、距離感が大事なようだ。
「どうした、ランバート。ずいぶん静かだな」
「え? あぁ、いえ」
黒い瞳が不意にこちらを向いた。それに、少し驚く。別に口を挟むような事ではないし、ウェインの補佐として来たのだから静かに見守っていたのだけれど。
「どうしました? どこか、具合悪い?」
「いえ、そのような事はありません」
今日はこればかりだ。溜息をつき、手にした点検表を届けようと一歩踏み出した。
その瞬間、足に力が入らなかった。ズキッと頭に痛みが走り、同時に目眩がする。今朝の軽いものじゃない、世界が回るような強いものだ。
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