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思わず手を掴んでしまうと、柔らかな瞳が笑いかけ、頭をクシャリと撫でる。そして、「ほんの少しだから」と言って出て行ってしまった。
心細く待っていると、エリオットが駆け込んでくる。室内が明るくなるとまぶしくて、それが頭に響いた。
「口開けて。あぁ、酷い腫れだね。熱も高いまま下がってない」
「大丈夫なのか?」
「薬飲んで、後は休むことです」
そうしていると、ドアがノックされてウェインが入ってくる。手にはお盆があって、湯気をあげるスープが乗っていた。
「料理府にお願いして、スープ作って貰ったよ。大丈夫、ランバート? ごめんね、やっぱり僕のをうつしたのかな」
しょんぼりと言われたけれど、多分そうじゃない。ランバートは否定するように首を振ろうとして、あえなく頭痛で挫折した。
「無理をしないの! 貴方は少し働き過ぎなんだよ。あれこれ気を回して、動き回って」
困った子供を見るようなエリオットの笑みは、呆れてもいた。けれど穏やかに笑われて、怒られている訳ではないんだと思えた。
ウェインが持ってきてくれたスープは、食材が小さく切られた美味しいものだった。美味しくはあるのに、沢山は入らない。あまり空腹も感じていなかった。
「食欲ない?」
「はい」と返事をしたいけれど、上手く声が出てこない。代わりに頷くと、とても気遣わしい瞳が返ってきた。
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