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違和感
新年を数日後に控えたある日。隊員の間で爆発的に流行していた風邪も落ち着きを見せていた。
起き上がったランバートは、ほんの僅か喉に違和感があった。だが、気のせいで済ませられるレベルだったから、そのまま起き上がった。水を飲めばその違和感も消えたようだった。
「おはよう、ランバート」
「あぁ、おはようラウル」
バタバタと入ってきたラウルが元気に言う。彼も風邪でしばらく寝込んでいたが、つい最近復帰した。今では元気そのものだ。
「顔、洗ってきたら?」
「あぁ、そうするよ」
身支度を調えて顔を洗いに下に降りる。今の時間なら少し空いているだろう。
踵を返して歩き出そうとした、その一歩を踏み出した瞬間目の前が僅かに揺れた。
え?
驚いて次の足を強く踏ん張った。だから倒れずに済んだ。それに、あの目眩も消えている。気のせいか、少し疲れているか。
「大丈夫?」
「あぁ、平気。少し貧血気味だったのかもしれない」
「本当に? 辛いなら、医務室行こうよ」
優しい友人はそう言ってくれる。けれど、不確かなもので医務室に行くのも気が引ける。医務室を預かるエリオットもここ数週間大変だったのを知っている。
「大丈夫だよ、ラウル」
ラウルの頭を撫でながら笑ったランバートは、そのまま顔を洗いに行った。
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