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「特にAIが仕事の大部分を担うようになった昨今ではなおさらだ。するべき仕事もないのに上にのさばる。こんな意味のないことはないよ。それよりは、会社は『人格』を育てるべきなのだ」 そういって仕事に戻りかけた根元を俺は慌てて引き止めて 「ちょっ、ちょっと」 「なんだね?」 そんな「まだ何か?」みたいな顔をされても困る。 というか、なぜあれだけの言葉で通じると思ったのか。 「『人格を育てる』というのは分かりました。とてもすばらしいことだと思います。でも、じゃあ、そのことと、俺がいきなり部長になることと、いったい何の関係が?」 「簡単なことだよ」 根元はそう言ってちょっと笑いをもらしながら 「上から下に。高いところから低いところへ。強いところから弱いところへ。従来とは逆に、垂直に動くことによって、人間は抽象化されたところからは見えないものを見ることが出来る。周りへの配慮を常に心がけ、上へ的確な対応を望むことが出来る、すばらしい『人格』が生まれ得るのだ。」 「…だから、上に?」 「そう」 根元はこくんとうなずいた。 「最低限の仕事を覚えてもらったら、新人は部長としての仕事をやってもらう。抽象化された仕事をこなしていくことで、やがて『降格』し、現場で必要なことが分かる、すばらしい『人格』が出来上がるということだ」 「……ええと」 分かったようでよく分からない。     
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