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しかし根元はそんな新人の反応にも見慣れたもののように
「ま、頑張ってください、部長」
といい置き、そのまま仕事に戻っていってしまった。
こうして、俺は晴れて「部長」として勤めを果たすことになった。
※※※※※※※※※※
それからの日々は、普通の社会人以上に混乱のし通しだった。
上に就くといっても所詮新人である。
てっきり修辞的意味なのかとも思ったが、部屋はきちんと部長級のものがあてがわれる。
仕事も部長らしいーーつまり何が書いてあるのかよく分からない書類をひたすら審議することにあてがわれた。
あるいは部長会議だ。
入ったことのなかった大きな集会室に、新入社員一同が集まる。
中央を囲む形で配置されたものものしい席に、学生臭が抜けきらない人間達が腰掛ける。
そしてその視線を浴びてプレゼンをするのが、40を越している「平社員」なのである。
変な会社だ。
「経理部長」やら「人事部長」やら「企画部長」、「クリエイティ部長」、等々、ものものしい役職をあたえられはしていても、何もいうことが出来ない。
おろおろしている新入りをよそに、誇らしげな「平」の社員がスライドを背に見事なプレゼンをしてのける。
俺達はただ頷くのみである。
これではどちらが上司なのか分からない。
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