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俺は悩んでいた。 わが国の経済状況は日に日に悪化してきている。 俺が生まれる十数年前には株価が二万円台の高値を記録したと騒がれた時期もあったらしいが、今はその見る影もない。 日本だけじゃない。 世界に目を向けても、覇者はいない代わりに、なお一層悪い混沌に突入していた。 中国はいびつな形で共産主義を成功させ、触手を着々と伸ばしている。 アジアはほとんど中国のいいなりだ。 アメリカは新たな言葉を次々と創り、トップに躍り出ようとしているが、その度に無様な失敗を遂げている。 ロシアには三度革命の嵐が吹いた。 イギリスは今世紀初めのEU離脱が国の根幹にひびき、国そのものが分裂してしまっている。 そして、そんな毒々しい焦土の片隅で、日本はあえでいた。 精神の上ではいつまでも過去の栄光をひきずり、反してハード面ではAIに極端な望みをかけた。 ディープラーニングの革新性はあらゆるところに及び、のんきに日本人が構えている間に、その機械化を勧めていく。 やがて若者の大量失職という状態が恒常化。 加えて大学の数を減らし続けてきたことで、少子化であるにも関わらず超学歴社会・倍率社会に突入していた。 俺、芦汰黎(あしたれい)はそんな社会の被害者だ。 学歴競争には案の定敗れ、いまどき学がなければまともな会社にも就けず、就活は見事失敗。 3年に渡って漫然な自由を謳歌した。 国の計らいにより最低限の生活は保障されているものの、社会的なステータスはボロボロだ。 働かなければ!! 4年目に突如思い立ち、競争の網目をかいくぐって、居場所を探し続ける。 だがそもそも現役時代に敗れた身の上で、能力もなく、さらに容姿も下の下ときては、成功など望むべくもなかった。 両親の暖かくも尾を引くような視線がつらい。 ところが、である。
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