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十月も下旬、私は薄手のダウンジャケットの襟元を立てた。昼間は天気が良ければ暑さが戻るけど、さすがに三時を過ぎると少々冷える。
(早く終わらせて帰らないとな)
大きな箱を抱えて歩いていた、箱と見えない足元に意識が集中していたのは否めない。
そして、箱の所為で視界が狭くもなっていた、私は曲がり角で左折してきた車に気付かなかった。
大きなブレーキ音と、右足への接触は同時だった。
流石に咄嗟に避けたけど、これが母なら激突だったかもしれない。
「きゃ……!」
はねられた、と言うより、びっくりして尻餅をついていた。
箱が落ちて、蓋をしていなかったそれから花が飛び出す、ああやばい、傷がついたかも!
車のドアの開閉音が聞こえた。
「大丈夫ですか!?」
若い男の声だった、はねられて怒るより、花に気を取られていた。
「え……ええ、大丈夫、です」
やっとの思いで視線を上げた。
まだ十代と思えるイケメンだった。ん? 十代なのに、外車に乗ってんの? BMWのマークが目に入る。どこぞのおぼっちゃまか。
免許取りたててで、外車乗って接触事故かあ、これが当たり屋だったらどうするのよ?
「すみません、病院へっ」
「いえ、大丈夫です」
私は花のことが気になっていた、だって早く生けて、お店に戻らないと……。
立ち上がろうとする私の目の前に、彼は片膝をついた、更に覗き込まれる。
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