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「──亜弥?」
「……はい」
思わず返事をしていた。
はて? こんなイケメン、会ったら忘れないけど……誰?
「村上亜弥だ! わお、美人になったな! 俺、葉山健次郎だよ!」
「──葉山」
ケンジロウ、と言う名に心当たりはなかったけれど、葉山姓には反応する、だって、それは、私の初恋の人の名前だから。
「こんなとこで会ったのもなんかの縁だ! 乗りなよ!」
「え、乗れって、私、仕事中……」
それでも腕を掴まれた。
「怪我も気になるし、ちょっとおいでよ」
「え、困る……!」
まだ立ち上がり途中の不自然な体勢だったのもあって、腕を掴まれたまま半ば引きずられて助手席に押し込まれた、車は右ハンドルだった。
「え、私、仕事が……!」
「病院行くって連絡しときなよ、それでも働けなんてブラック企業だって」
いや、我が家で働いてれば多少のブラックはありますけどね!
それでも私はギャルソンエプロンのポケットからスマホを取り出した。
「あ、花……」
言った時には車は走り出していた、まあ、いいか、母に回収してもらおう。
「ごめん、お母さん、なんか事故ちゃって」
『ええ!? 大丈夫!?』
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