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冷たい声が私の耳元でした、もちろん健次郎くんに向けた言葉だ、健次郎くんの返事は舌打ちだった。
「手錠の鍵を出せ、持ってないとは言わせないぞ」
健次郎くんは少し悩んでから、ジーンズの後ろのポケットからそれを取り出した、私は整わない呼吸の中でそれを見た。
健次郎くんの手の平に、こんもりと乗る小さな鍵の山……5個分の手錠の鍵だろうか。
健次郎くんがふと笑うのを見た。
「賭けをしようぜ」
鍵は二つずつ、小さなダブルリングに留められ、それを大きな一つのダブルリングにまとめたものだった、その大きなダブルリングから外しながら言う。
「賭け?」
東吾が感情を抑えた声で聞く。
「鍵は5個、一度も間違えずに今亜弥にかかっているものを当てられたら、俺は亜弥を諦める、金輪際指一本触れない、声を掛けるのもやめようか? でももし一度でも間違えたら、俺にもチャンスをくれ」
「チャンスぅ?」
東吾の怒りが増したのが判る。
「俺も亜弥が好きなんだ、それは本気。兄ちゃんと結婚すると決まって、はいそうですかって諦められないくらい、亜弥が好きなんだ」
「お前の気持ちなんかどうでもいい、亜弥の気持ちを考えろ」
「まあいいじゃん、兄ちゃんが賭けに勝てばいいだけだろ。兄ちゃん達の愛の証明にやってみせてよ」
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