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茶化す健次郎くんを、東吾は少しの間見つめていたけれど、
「──俺が間違えずに選べば、本当に亜弥には近づかないな?」
健次郎くんは馬鹿にしたように笑った。
「ああ、約束する」
東吾は私を見下ろした。
「だ、駄目だよ、そんな約束……」
もし、間違えたら……!
なのに、東吾は、
「判った」
短く言って、私の上から退いた、私の体には、再び羽織を掛けてくれた。
なんで、なんでそんな事……!
東吾は無造作に一つの鍵を手に取った。
小さなダブルリングで繋がった二つの小さな鍵は、合鍵がそのまま付いているのだろう。
東吾はそれを、私の左手を拘束する手錠に挿した、でもどうやら違ったようだ、でもそれは間違いに入らないらしい、次に右の手錠に挿したら──開錠された!
微かに健次郎くんの舌打ちが聞こえた。
「──東吾……!」
嬉しくてすぐさま自由になった腕で抱きしめていた、東吾が優しく背中をさすってくれた、足首のものも外され、やっと右手と右足が解放される。
東吾は今度は少し思案してから次の鍵を取った、すぐに健次郎くんが残りの鍵を握り締めたのが見えた、他のは選ばせないと言う意思表示だろうか。
果たして、東吾が選んだ鍵は、きちんと私の左手首の手錠を外した。
「東吾──!」
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