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怒鳴るけれど手遅れだ、健次郎くんはご丁寧に窓を閉めて両手を上げる。
「この高さから物を落としてはいけません、てね」
「よりによって使用中の手錠の鍵なんてもってのほかだな!」
「まあ怒るなよ、俺からの餞だって。じゃあま、仲睦まじくお過ごし下さい」
健次郎くんは、そのまま私達を見ずに行ってしまう。
「健次郎!」
まだ繋がれている自覚が薄いのか東吾は追いかけようとする、勿論すぐに右足を取られて動けず、私が呻くものだから慌てて止まってくれたけど。
遠くでドアの開閉の音がした。
静まり返った部屋で、東吾は頭を抱える。
「東……吾……どうしよう……?」
途方にくれて声をかけた、二人揃って手錠で繋がれるなんて……。
東吾は溜息を吐いて顔を上げた。
「とりあえず」
ぐいと手を引かれて体を起こされる。
「風呂行こう」
「え、なんで……!」
呑気すぎだ!
「健次郎の匂いがするのは気に入らない」
あ……一時間も触れ合っていたんだ、当たり前だよね……。
ベッドから降りて、ふと気付く、二人揃って足を繋がれていては歩き辛くてしかたない。
「二人三脚だね」
私が思わず笑って言うと、
「面倒くさい」
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