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「佐伯さんの娘さんがインフルエンザになったとかで、申し訳ないけどって」
「そうなんだ……」
健次郎くんの嘘が、そんな形で現れるとは。
「片付けを買って出たのがいけなかった。すんなり帰ってきていれば、亜弥をあんな目には……」
目の前の東吾が唇を噛んだ。
「ん……確かに怖かったし、嫌だったけど……東吾が来てくれて嬉しかった」
東吾は微笑んで、私の額にキスをしてくれた、優しいキスに嬉しくなる。
東吾はブラシを使ってブローまでしてくれた、時々女子力は東吾の方が高いのではと思うよ。
綺麗に髪を整えられて。
「さて、何を着るか」
着ていた服は見事に原型を留めていない、そして私はまだ服をこの部屋には置いていなかった、「早く持ってきな」とは言われたけど、どの道足を繋がれた状態では着られる服も限られる訳で。
「おいで」
優しく言われて、手を繋いでいざなわれた、この時には緩い二人三脚にも大分慣れていた。
行ったのはリビングに入って左手の部屋、通称『タンス部屋』だった。
私も今までに覗いただけはある、和箪笥が三本、洋箪笥二本ある部屋だ。三面鏡と衣桁もある。
普段着は寝室のウォークインクローゼットに入っているけれど、着物やフォーマルウェアはここにまとめられているのだ。
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