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「当たり前とは言わないけど、お稽古でも着物は着た方がいいな、所作が身につくから。でもその度に着付師呼んだらお金かかって仕方ないじゃない」 そりゃそうだ。覚える事がたくさんありそうだな……なんて尻込みしちゃダメか。 「これならいいかな」 藤色の着物を出してくれた。 「襦袢の袂を掴んで、袖を通して」 「ん」 着物なんて成人式以来だ、それを東吾に着せてもらうなんて……なんか変な感じ。 合わせを整えて、下帯を締めて、更に半幅帯を締めてくれた。 「できあがり──はは、男装の麗人みたくなっちゃったな」 私の肩越しに鏡を見た東吾が笑った。 そうかな……とは思ったけど、確かにイメージする和服姿の女性と比べたら、少し男っぽいかな……東吾が締めた帯の位置が低いのかな、やはり着物自体が男性用だから……? 「でも、似合ってる。可愛い」 そんな事、普通に言わないでよ、恥ずかしい……。 「……なんか簡単に結んでたけど、色々使って帯って結ぶんじゃないの?」 私は三面鏡で背中を映しながら聞いた、膨らみも無い、ぺたんこの帯が背中で結ばれていた。 「それは貝ノ口って言って、浴衣なんか略装の時に使う結び方だよ。帯揚げなんかは無くても結べる」 東吾も自分の物を着ながら教えてくれた。 「ふうん」 浴衣もいつ以来かな……なんか、小さな子供のように、袖をバタバタさせてしまった。     
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