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成人式も浴衣も、『着させられてる感』があったけど、この着物は肌になじんで心地よかった。
「さて、と」
東吾は自分は鏡も見ずにさっさと着終えて、私の手を握ってくれた。
「とりあえず、この状況を脱しないとね」
そうだ、手錠をなんとかしなくては。
*
ソファに座った私たちを前に、万里子さんがあんぐりと口を開けていた。
「──健次郎……どうしちゃったの……?」
三度目の監禁だ、そして東吾と繋がれてしまった事実を、一応遠回しには説明した。
なんせ私は東吾が高校時代に着ていたと言う着物に着替えているのだ、その状況からして、誤魔化すことなど、できず。
東吾に電話で呼ばれて来てくれた万里子さんが、私が着る着物を「あら懐かしい着物、似合ってるわよ」なんて言っていたけれど、さすがに青ざめた。
「亜弥ちゃんに、東吾と別れろなんて……そんな……」
嫌がったら手錠をかけて脅され、衣服を切られた、とは言った──乱暴されたことは、さすがに言えなかった、私も東吾も。
「お持ちしました」
男性のお弟子さんがまたペンチを持ってきてくれた。
鍵は健次郎くんが窓から投げ捨ててしまい、探すのと、消防署へ行くのとどっちが早いか、と言う相談の上、消防署へと言う事になったのだ。
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