2329人が本棚に入れています
本棚に追加
それはそれで、なんか……。
ちょっと不機嫌になると、東吾は私の耳に口を寄せて囁いた。
「処女だったし?」
小声とは言え、ここで言うかー! 東吾の顔を押して離した、東吾は笑うだけだ。
「で? で?」
店員のおばさまがニヤニヤ笑いながらやって来た、注文していない焼き鳥盛り合わせがテーブルに置かれる。
「ま、近くで見ると、ますますいい男ねえ」
「ありがとうございます」
東吾、言われ慣れてると見た。
「ちゃんと仲直りしたの?」
「しましたよ、ね? 亜弥」
とか言って、私の左手を掴んでその指先にキスをする、きゃあ人前でやめて!
「まあ、お熱いこと」
おばさまは丸盆で顔を仰ぎながら立ち去った。
「あら、指輪」
美乃利に見つかった。そう、薬指に東吾がくれた婚約指輪がある、昨日、買ったばかりだ、恥ずかしいよお。
「兄ちゃん達は付き合って、まだ日は浅いのかい?」
酔って真っ赤な顔をしたおじさまが来た。
「どうでしょう? 知り合ったのは子供の頃で、その頃から僕は彼女が好きでしたけど、つい先日久々に出逢えて。まだひと月くらいかな?」
東吾は真面目に答える。
「そうかい、そうかい。でなきゃ堂々と「愛してる」とは言えねえよなあ」
「なんで聞こえたんですか?」
「……美乃利が……」
最初のコメントを投稿しよう!