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唇が離れると、東吾はぎゅっと私を抱き締めてくれて──そのまま崩れた。 「え、東吾……!」 不自然な姿勢のまま、私の太腿を枕に寝てしまう。 「もう……」 そっと髪を撫でた、可愛いな、子供の頃に戻ったみたいだ……。 「はい、お水、お待たせ」 おばさま店員がテーブルにコップを置いてくれた、いや、時間かかりすぎだから! 「で?」 正面の美乃利は目を座らせて私を睨んでいる。 「つい先日、喧嘩した、どうしようと言っていたバカップルの濃厚キスシーン、アンド、アホ告白を聞かされた私はどう反応したらいいのですか?」 「んな事知りません」 私は笑ってやった、だって。 「このお店に東吾と二人で来いって呼び出したのは、美乃利でしょ?」 当初の約束通り、焼肉店にでも行っていればよかったのに。面白がってこんなところに呼び出した美乃利が悪いのだ! *** それから二週間後。 私は花屋の仕事を辞め、東吾と暮らし始めていた。 健次郎くんは年明けにアメリカへ行くと言う。初めは目の届くところにいろと怒っていたお義父さんの充輝さんもおじいちゃんも、東吾の一言で納得する。 「モデルの仕事は続けろ、茶道も」 事務所との契約はまだ1年半も残っていたのが理由だ、事務所もアメリカでの仕事を見つけると言ってくれたらしい。 「んじゃ、樹洞流をアメリカでも広げますか?」 そんな健次郎くんの言葉に、またお義父さんとおじいちゃんは怒っていたけど──恥の上塗りをするなと。でも多分やるだろうなと思った、多分、もう健次郎くんは戻ってこないつもりだろう、私もいるこの家には……。
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