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昔の胴長寸胴な体形ならともかく、今の人はやはりメリハリの効いた体はしているので、背中や腰にタオルなどを巻かないとならないのだそうだ。そして、その、やはり私は胸が大きいほうらしくて、しっかり晒で胸を潰せを言われてしまっている……その作業はちょっと手間だけど、綺麗に着るためには仕方ない。
格闘していると、タンス部屋のドアがノックされた。
「準備できた?」
東吾だ。
「ん、ちょっと待って……」
って言ったのに、ドア、開けたー!
「まだ、長襦袢、着てないから……!」
そりゃ恥ずかしがる仲じゃないけどさ! 肌襦袢は言わばキャミソールみたいなもので、それを見られるって、結構抵抗が……!
「いいよ、補正手伝う」
東吾は笑顔で言って、タオルを手に取った。
腰と背中のくぼみに合わせて腰紐で留めて、晒を巻き始める。
途中、ぐいっとかなりの力で締められて……。
「……ん……」
思わず声が出た。
東吾は私の耳元に口を寄せる。
「──感じる?」
「……感じません」
そんな趣味はありません。
「──なあんだ」
笑顔で言って、晒を緩めてくれる。
それを巻き終わると、今度は長襦袢だ、東吾が広げてくれたから袖を通した。東吾は私の前に立って合わせを整える。
「あの……私がやるけど」
私が着れないと意味がない。
「んー、着物は着たら?」
衣紋と合わせが決まったら腰紐で留めてくれる、その時も無駄に密着してる感じはあるけど、まあいいか。
そして衣桁から訪問着を取り広げてくれた、これは万里子さんからのお下がりだ。私は大人しく袖を入れた。
私が見ている前で。
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