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ホテルのロビーで花を生ける。
家業は花屋、店頭で売るだけでは生計は成り立たないので、近隣のホテルや店舗、オフィスに営業をして回ったのは、脱サラして手伝っている父だ。
自称、優秀な営業マンだった父のお蔭で忙しくしている。
桜木町駅近くの小さなホテルだ。
元は造花を飾っていたのを、どうせなら生花でと言う営業を受け入れてもらえた。
以前は母がやっていた生ける作業も、大学を卒業して一年経った春からやらせてもらえるようになった。
専業主婦だった母が、趣味が高じて「花屋をやりたい!」と言い出したのは、数年前だった、私の大学受験の頃と重なる。子育ても終わったとでも言いたげに宣言した。
父も私も反対したけれど、結局、二人してその手伝いをしている、母は人使いがうまいのだろう。
「亜弥はセンスあるわあ」
そんな言葉にほだされて、フラワーアレンジメントや生け花を習った。カラーコーディネイトも勉強したし、ラッピングの講習にも行った。
本当に、どっぷりだ。いずれは跡は継ぎたいと思っている。
ホテルの大きな花瓶に生けた花を、少し離れて全体の様子を見て首を傾げていると。
「おう、いっつ、あめーじーんぐ」
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