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「でもイボがあるって分かった時は大変でしたよ。とるのに結構手間がかかっちゃったみたいで」
「私もとったことありますよ。なかなかとれなくて大変でした。イモ」
「吉沢さんもですか。」
「近所の人たちと皆で協力してとりました」
「近所の人たちに見せたんですか!」
「立派だって褒めてくれました」
「どんな近所の人たちですか」
「たくさん取れたから近所の人たちにお裾分けもしました」
「猟奇的すぎるだろ! 何につかうんだ!」
いつも冴えない彼女が欲しいと愚痴をこぼしていた洋介がとても楽しげに女性と会話している様子を見て、まるで父親の様に微笑むマスター。彼にもやっと春が来たとしみじみ勘違いをしていると店のドアが乱暴に開けられてドタドタと男が入ってきた。
「おい! 金をだせ!」
まさかの強盗だった。
現代日本において寂れた喫茶店へ強盗しにくる輩など想像したこともなかったが実際にそんなバカが目の前に存在している。
帽子とサングラスをかけて顔には白いマスク。右手にはナイフを持っている。マスターは驚いて磨いていた平皿を落としてしまった。
陶器の平皿が固いタイル地の床に落ち割れる。誰も予想していない大きな音は犯人をさらに刺激させた。
「ボサボサしてねーで早く金をこのバッグに入れろ。おい! そこのお前!」
犯人は洋介にナイフの刃先を向けた。
「洋介君、ここは素直に従おう」
「マスター…すみません」
洋介は椅子からゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。突然の強盗の来襲により肛門に負荷がかかってしまい痔が再発したようだ。動くたびに傷が痛むのでなるべく刺激を与えないようにゆっくりと歩いた。
あまりのスピードの遅さに苛立つ犯人は洋介の尻を足蹴にした。
「テメェ、牛歩してるんじゃねぇ! はやくしろ!」
「すみません優しくしてください! 切れてるんですよ!!」
「おまえ下手に出てるんだか怒ってるのかどっちなんだ!!」
洋介に気を取られている犯人に目掛けて何処からともなく鉄拳が飛んできた。直撃しその衝撃で吹き飛ばされる犯人。
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