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 静まり返る喫茶店花歌鳥。  窓から差し込む夕日によって真っ赤に染まった店内で洋介と吉沢とマスターが呆然と立ち尽くす。  最初に口を開いたのは吉沢だった。   「洋介さんすみません。私実は男なんです」 「でしょうね」  目に涙を浮かべ顔を手で覆う吉沢。彼にとっては最後まで守り抜きたかった秘密なのだろう。彼にとっては。  肩と大胸筋をピクピクと震わせながら小さく嗚咽を漏らす吉沢。   「でも、助けてくれてありがとうございます。あのままだったら僕痛くて死んでました」 「そういって頂けると嬉しいです。洋介さん、もしよかったらわたしと…うっ」  吉沢は低い呻き声をあげて蹲った。ナイフで攻撃された部分が傷むのだろうか、臀部を抑えて肩膝を着く吉沢に駆け寄る洋介。 「吉沢さん! 大丈夫ですか?」 「これくらい大丈夫です。洋介さん、もし良かったら私と友達になってくれませんか?」  洋介は吉沢の肩に手を置いた。 「なに言ってるんですか。そんなこと言わなくても、もう友達ですよ」  吉沢は笑いながら涙を流した。夕日に照らされて、涙の粒がダイヤモンドの様に輝いている。この世で一番美しい涙だと作者は思う。 「その…吉沢さん。よろしかったらお名前を教えてもらってもいいですか?」 「はい、二郎です」  臀部に手を当てながら答える吉沢を見て洋介は言った。 「痔ろうですか。お互い大変ですね」
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