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5.気付き
医者の話は残酷だった。もう、いつでもおかしくないとのことで、もってあと1ヵ月ということだった。
目の前の母親の意識はなかったが、一度も戻らないまま亡くなる可能性もあるということだった。
「おじさん」
「流星、姉さんはよく頑張った。もう、楽に眠ってくれと思うようになってきた。おれも耐えられなくなってきてる」
おじさんは泣いていた。ほんとなら流星も泣いてただろう。しかし、流星にはどうしても解せなかった。
(歩牛灯に入ってきたのは母さんだ。間違いない。今日、初めて母さんは店にきた。でも、ここにいるのも母さんだ。店に入れる条件って、、、)
考えた。何か、わかりそうな気がした。
(僕が歩牛灯に通い出して2週間程度だ。今、歩牛灯で見ている記憶は、僕の年齢の丁度半分くらい。母さんの余命は1カ月、1カ月の半分、2週間で僕は人生の半分を振り返ったところ、、、半分、、、2週間で人生の半分、、、半分!!)
頭を撃ち抜かれたような衝撃だった。
(なるほどね。だから歩牛灯か)
「健二おじさん、悪いけど今日はもう帰るね。ちょっと、考えたい」
「流星、一人じゃないぞ、おじさんもいるからな」
「ありがとう、おじさん」
おじさんは心配そうに流星を見ていたが、流星はおじさんの心配とはまったく関係ないところについて考えようとしていた。
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