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一話
フリーターの多島くんと、女子高生の由希乃は、商店街でバイトをしている年の差カップルである。現在交際歴は三ヶ月。
多島くんは、資格試験の勉強の傍ら叔父の経営する弁当屋で、由希乃はそのお向かいにある本屋で毎日バイトをしている。
由希乃はバイトが終わったあと、商店街のコンビニのイートインで多島くんとプチデートをするのが日課だった。
☆
「今日さ、お客さんに『お気に入りのお店ってある?』って聞かれたんだ。由希乃ちゃんは、そういうお店ってあるの?」
多島くんは指先で空になった入った紙コップを持ち上げ、反対の手で頬杖をつきながら、並んで座る由希乃を肩越しに見て尋ねた。
「うーん、あるけど、ちょっと遠いんだ。前住んでた家の方で、ここから歩くと30分ぐらいかかるとこ。多島さんは?」
「俺もあるけど、もうちょい遠い。ここから電車で一時間ぐらいかな」
「そっか……」
「明日は日曜で休みだから、由希乃ちゃんのお気に入りの店に行ってみないか?」
「いいの? だってまだ何屋かもわかんないのに」
「べつに。由希乃ちゃんのお気に入りってどんなのか、見てみたいだけだから」
「……なら、いいけど。えっとね、ちょっとアンティークな喫茶店だよ」
「それむしろ見たい」
「多島さん、そういうの興味ある?」
「あるある。けっこうあるよ」
「ふーん……。じゃ、決定ね」
由希乃ちゃんと一緒にいられれば、どこでも幸せな多島くんは二つ返事で出かける約束をしたのだった。
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