一話

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「そ、そう? ……ほんとに大丈夫?」 「だーいじょうぶだってば。それに、こないだママが言ってたよ」 「なんて?」 「ある程度大人になったら、十歳程度の差はあんま関係なくなるからって」 「まあ、それはそうだけど……俺の方が先におっさんになっちゃうじゃん」 「だいじょうぶだよ。すぐ追いついて私もおばさんになるから」 「……おばさんになっても俺と一緒にいてくれるの?」 「え、ちがうの? 私ほかの人と結婚しないとダメ?」 「イヤイヤイヤイヤ、そんなことない。っていうか俺と、俺、と……」  多島くんは立ち止まった。  何かを言いよどんでいる。  由希乃が振り返った。 「どうしたの?」 「――こういうのってさ、もっと、ちゃんと用意とかして……然るべき場所と然るべき時間に……その……」 「え? 何のこと?」  多島くんは、額を手で押さえると、くっくっく……と笑いだした。 「また俺は……一人で考えすぎて……。いや、これは由希乃ちゃんが悪い」 「はーっ? ちょ、なに私が悪いことになってるの?」 「まだわかんない? 由希乃ちゃんが俺に言わせようとしてることって」 「ことって?」 「プロポーズでしょ」  由希乃はその場でちいさく跳ねると、顔を真っ赤にした。     
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