6人が本棚に入れています
本棚に追加
「そ、そう? ……ほんとに大丈夫?」
「だーいじょうぶだってば。それに、こないだママが言ってたよ」
「なんて?」
「ある程度大人になったら、十歳程度の差はあんま関係なくなるからって」
「まあ、それはそうだけど……俺の方が先におっさんになっちゃうじゃん」
「だいじょうぶだよ。すぐ追いついて私もおばさんになるから」
「……おばさんになっても俺と一緒にいてくれるの?」
「え、ちがうの? 私ほかの人と結婚しないとダメ?」
「イヤイヤイヤイヤ、そんなことない。っていうか俺と、俺、と……」
多島くんは立ち止まった。
何かを言いよどんでいる。
由希乃が振り返った。
「どうしたの?」
「――こういうのってさ、もっと、ちゃんと用意とかして……然るべき場所と然るべき時間に……その……」
「え? 何のこと?」
多島くんは、額を手で押さえると、くっくっく……と笑いだした。
「また俺は……一人で考えすぎて……。いや、これは由希乃ちゃんが悪い」
「はーっ? ちょ、なに私が悪いことになってるの?」
「まだわかんない? 由希乃ちゃんが俺に言わせようとしてることって」
「ことって?」
「プロポーズでしょ」
由希乃はその場でちいさく跳ねると、顔を真っ赤にした。
最初のコメントを投稿しよう!