一話

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「え、え、えええ、そ、そう、そそそそそういうこと……なの?」  多島くんは腕組みをして、うんうん、とうなづいた。 「そういうこと。で? 由希乃ちゃん的に、いま、ここで、そういうの、やっちゃっていいわけ? ときどき電車が真横を通過する、ただの道ばたで」 「よ、よよよよ、よ、よく、よくないっ!」 「ま、するのは確定として……今度でいいかい?」  由希乃はブンブンと全力でうなづいた。  多島くんは小声でぼそぼそつぶやいた。 「俺だって……ちゃんと指輪ぐらいあげたいんだよ……」 「何か言った?」 「いーや。じゃ、帰ろう」 「うん!」  二人は、つないだ手をぶんぶんと元気よく振りながら、日の傾きかけた歩道を歩いていった。                               (了)
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