6人が本棚に入れています
本棚に追加
「え、え、えええ、そ、そう、そそそそそういうこと……なの?」
多島くんは腕組みをして、うんうん、とうなづいた。
「そういうこと。で? 由希乃ちゃん的に、いま、ここで、そういうの、やっちゃっていいわけ? ときどき電車が真横を通過する、ただの道ばたで」
「よ、よよよよ、よ、よく、よくないっ!」
「ま、するのは確定として……今度でいいかい?」
由希乃はブンブンと全力でうなづいた。
多島くんは小声でぼそぼそつぶやいた。
「俺だって……ちゃんと指輪ぐらいあげたいんだよ……」
「何か言った?」
「いーや。じゃ、帰ろう」
「うん!」
二人は、つないだ手をぶんぶんと元気よく振りながら、日の傾きかけた歩道を歩いていった。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!