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花屋のご主人に地図を書いてもらい、由希乃と多島くんは隣町へと移転した喫茶店に向かった。今度はちょっとゆっくり、景色を楽しみながら。
「なんかずいぶん遠出になっちゃった。ごめんね、多島さん」
「いやいや。今日は丸一日由希乃ちゃんと散歩デートする気で来たんだから、まったく問題ないよ」
「そんならいいけど」
「疲れてない? タクシー拾ってもいいんだよ」
「いいよもったいない。歩いて行けない距離でもないし。それに」
「それに?」
「私も多島さんと、一日中ずっと一緒にいられるし、ゆっくり話が出来るから嬉しい」
多島くんは嬉しさのあまり、両手で口を押さえて、ふるふる震えている。
「どうかした?」
「い、いや……ちょっと」
「へんなの」
「うん……俺、今日はヘンかも」
「どうヘンなの?」
「うふ、うふふ……うれしくて、おかしくなってる……かも」
「ちょっ……だ、大丈夫?」
多島くんは、真っ赤な困り顔でうんうん、とうなづいた。
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