7人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
☆
二人は、おしゃべりをしながらダラダラ歩いていると、いつのまにか目的の店にたどり着いた。
「ここかな。やっと着いたね。お店は……やってるようだよ」
「あー……そっくりだぁ……」
「外観からすでに似てるのか。やはりお父さんの店への思い入れが強いんだな」
「えっと……大きさはこっちの方が小さいんだけど、でも……同じだってわかる」
「文字通り、同じ遺伝子を受け継いでるってカンジか」
「そう、そうそう! そういうやつ! やっぱ大人はちがうなー」
「うん、そう、だね」
多島くんの顔が一瞬曇ったが、由希乃は気付かず、店先のメニュー看板を物色していた。あまり由希乃に大人扱いされたくない多島くんなのである。
☆
『カランコロン』
多島くんが店のドアを開けると、上端に取り付けられたカウベルが鳴った。
促されて店内に入った由希乃が、わぁ、と声を上げた。
「すごい……。なにもかも同じ、でもぎゅっと濃くなったカンジ……」
「ホント? それはよかった」
店内をキョロキョロ見ている由希乃を、ニコニコしながら多島くんは見ている。
「いらっしゃいませ。お好きなお席へどうぞ」
多島くんより少し年上と思しき男性が、二人に声をかけた。
細身のフレームのメガネをかけ、知的で落ち着いているように見える。店のイメージにピッタリだ。
最初のコメントを投稿しよう!