一話

7/11

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「ああ、それでわざわざこちらの方に来て下さったんですか! どうもありがとうございます。父に代わりお礼を申し上げます」  多島くんと由希乃はぺこりと頭をさげた。 「私も、父の店が大好きでした。後を受け継ぐにあたり、出来るだけ雰囲気を再現しよう、と努力してみましたが……いかがですか? 面影はございますでしょうか、お嬢様」    急に話を振られた由希乃はあたふたしてしまった。 「え? あ? お、おお、お嬢様? ああ、あの……えと……」 「由希乃ちゃんがんばれ」 「やだもう、変なこと言わないで。……えっと……す、すごいそのままの雰囲気で……場所も大きさも違うのに……なんていうか同じ遺伝子っていうか、すごい懐かしくて……嬉しかった、です。はい」 「そうですか、それは良かったです。父のお客様にそう言って頂けるのが、一番の喜びです。味の方は……まだまだ、だと思いますが」  マスターはクールな表情を崩して、くすくすと笑った。 「あ、その……ごめんなさい……まだ子供だったから味とかよく……っていうか、多分私コーヒー飲んでないかも、です。クリームソーダばっかだったかも……」 「それでいつもクリームソーダ飲んでるのか~」  と多島くん。うんうん、と納得した様子だ。 「いや、だって、普通のジュースとクリームソーダがあったら、子供はクリームソーダたのむのふつーじゃん」 「それもそーだ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加