一話

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                  ☆  しばらくマスターと三人でのおしゃべりを楽しんだ後、多島くんと由希乃は喫茶店を後にした。店を出た由希乃はすっかりご満悦で、多島くんは彼女を連れてきて良かったと思った。  数駅分、と家からずいぶん遠くまで来てしまったが、二人きりの時間を惜しんでか、由希乃は歩いて帰ることを選んだ。  人気のない線路際の道を歩いているとき、どちらともなく手をつないでいた。 「なんか、こうして手をつないでると恋人同士みたい」 「えっ……ち、ちがうの?」  多島くんが青くなった。 「あああ、そうじゃなくって……恋人同士っぽいなあって」 「なんだ、びっくりした。おどかさないでくれよ。ただでさえ……俺、心配なんだから」 「何が?」 「……年の差が。君にいつ捨てられるかと思うと、たまに眠れなくなることがある……」  うつむく多島くん。 「気にしすぎだよぉ……」 「そうかなあ……」 「それに年より見た目すごい若いし、そこまで年離れてる感じしないし。十歳差なんてわかんないよふつー」 「それって童顔って意味?」 「いやそういうアレじゃないから、違うから。それに」 「それに?」 「私、年上の人すきだから。うん、だいじょうぶ。お兄ちゃんとかなり年離れてたし」     
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