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☆
しばらくマスターと三人でのおしゃべりを楽しんだ後、多島くんと由希乃は喫茶店を後にした。店を出た由希乃はすっかりご満悦で、多島くんは彼女を連れてきて良かったと思った。
数駅分、と家からずいぶん遠くまで来てしまったが、二人きりの時間を惜しんでか、由希乃は歩いて帰ることを選んだ。
人気のない線路際の道を歩いているとき、どちらともなく手をつないでいた。
「なんか、こうして手をつないでると恋人同士みたい」
「えっ……ち、ちがうの?」
多島くんが青くなった。
「あああ、そうじゃなくって……恋人同士っぽいなあって」
「なんだ、びっくりした。おどかさないでくれよ。ただでさえ……俺、心配なんだから」
「何が?」
「……年の差が。君にいつ捨てられるかと思うと、たまに眠れなくなることがある……」
うつむく多島くん。
「気にしすぎだよぉ……」
「そうかなあ……」
「それに年より見た目すごい若いし、そこまで年離れてる感じしないし。十歳差なんてわかんないよふつー」
「それって童顔って意味?」
「いやそういうアレじゃないから、違うから。それに」
「それに?」
「私、年上の人すきだから。うん、だいじょうぶ。お兄ちゃんとかなり年離れてたし」
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