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「あの時、無理しなけりゃ、俺があそこに立っていたのにな」と、独り言ちる。
俺はスキーでハーフパイプを滑る。普通の人はハーフパイプ競技といえばスノーボードしか思い浮かべないだろう?
でも、スキーだってハーフパイプ競技があるし、更にオリンピック競技でもあるということも知らない。
俺は30歳を超え、今回の平昌オリンピックが実質的な競技生活として最後の舞台だ。
これがスノーボードだったらコーチやプロとして、活躍の場もあるのだが、いかんせんスキーでハーフパイプを滑るという競技者は少なく、アルペンスキーやジャンプ競技の様な解説の口も殆ど無い。文字通りフリースタイルな生き方になってしまうだろう。
あいつは平昌オリンピックで確実に表彰台に登るだろう。俺とあいつで完成させたトリプルコーク1440という『縦三回転・横四回転』という、日本人で、ハーフパイプで完成できるのは俺とあいつしかいない。
ハーフパイプは採点競技だ。技の完成度も大切だが、忘れてはいけないのはジャンプをした時の高さや、グラブという板の掴み方で採点は大きく変わってくる。 トリプルコーク1440をやる前のファーストヒットの高さや、グラブなんかはあい
つより俺の方が格段に上手いと言われている。
俺はだれからも文句なしの日本代表だった、三週間前までは・・・
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