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『ええ。だけど、テュールとフレイアは既に貰い手が決まっているの。
気に入った子はどの子かしら?』
お姉ちゃんはクルリと部屋を見渡すと、カーテンの影にいるボクに笑いかけた。
『あの子。バルダーが良いです』
『そうだな、あの子が良さそうだ。
大型犬は慎重な性格の方が良い』
おじさんが足下にすり寄る兄弟達に
『ごめんよ、ちょっと通してな』
と言って近づいてきて、ボクの前に座った。
『お前、家に来るか?』
言葉と共に差し出される手。
日に焼けた大きな手だった。
クンクン
さっきまでパパを撫でてたからかな? 少しだけパパの匂いがした。
ペロン
『そうか、来るか』
優しそうな声で言うと、そっとボクの肩口を撫でる。
その手は温かくて気持ち良かった。
『ふふ、可愛いわね。貴方が家に来るの楽しみにしてるわよ』
おばさんがフンワリと笑いながら話し掛けてくれる。
どうやら、この3人がボクの新しい家族になるみたいだ。
嬉しいような、気恥ずかしいような、寂しいような複雑な感じだけど、きっとボクは幸せになれると思ったんだ。
それから数日後。
お姉ちゃんが一人でボクに会いに来た。
ボクに初めてのプレゼントを持って。
そのプレゼントは新しいボクの名前だった。
ボクの名前は古川・バルダー・ガルシア。
きっと世界一幸せな犬になるんだ。
Fin
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