町に行くと……【ミラリー】

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ミラリーはウキウキしていた。 日頃、自然豊かな山奥に構える砦を拠点に傭兵としていろいろな依頼をこなしているわけだが、ミラリーは思う。 もっと、女子として恵まれなきゃいけないよね。 そう、いつも男臭いメンツに囲まれ、仕事は力仕事や山賊などのならず者退治。そんなの全然女子じゃない! 気品溢れる王都女子までは欲張らない、せめて町の女子くらいの幸せを感じさせて! それなのに、行くとこ行くとこ、村、村、むら、ムラ! 町がない! 村にもいいところはあるんだけど、町のファッションを楽しみたいのよ! こんなふうに心の叫びが半端なく、ミラリーの欲求不満は、なみなみに溢れんばかりとなっていた。 だからこそ今回、とある調査で町に行くことを聞いたときのミラリーの喜びようったら尋常じゃなかった。奇声のような声を上げてしまったくらいだ。 自室に戻ると、ミラリーはすかさずクローゼットの奥に手を突っ込み、村では浮いてしまうような秘蔵のファッションを掘り出してきた。それらを姿見で延々と眺め、一番いいのを選ぼうと悩みに悩んで悩み倒した。 その様子に不安を感じたらしいアトランがさりげなくミラリーの言動に注意を払っていたが、もちろんミラリーは想定済みだった。冷静を装い、つつがなく日々を過ごして、監視の目をどうにか欺き通したのだ。
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