9/10
前へ
/32ページ
次へ
「ちょっと……トイレ」   私はひとりで落ち着きたいと思い、席から離れた。 教室から出たところで、ちょうど一緒になった担任の松野先生から、「あぁ、宇崎さん」と声をかけられる。 私は、ビクッとして立ち止まり、「……はい」と返事をした。 なんとなく、言われることがわかっていた。 「今回、どうしたの? 本調子じゃなかったかい?」   ほら、やっぱりだ。 「いえ……は、はい。ちょっと……」   私はしどろもどろに肯定する。ちょっと目眩もしてきた。 「ピアノのコンクールももうすぐだから、そちらにばかり根を詰めすぎちゃったのかもしれないね。バランスが大事だよ」 「……はい」  
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

330人が本棚に入れています
本棚に追加