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「嬉しそうな音だったね。なんかあった?」
旧音楽室でひととおり練習を終えた私に、相良くんはそう言った。
「ううん」
と返すも、内心ものすごく驚いた。
相良くんの耳がよすぎるのか、私がわかりやすすぎるのかはわからないけれど、この部屋の心地よさに気を抜くのは危険だ。
全部見透かされてしまう。
今日は雨だし、気温も高くないから、窓はすべて閉めてある。
静かな雨音、廊下側の磨りガラスと中庭側の濡れた窓、その外の緑を揺らす雨粒。
こんな雨の日の旧音楽室は、教室以上にいつもと様相が違い、風情すら感じる。
「テスト前なのに、来るんだね、ここ」
相良くんは、スマホの代わりに日本史の教科書を読んでいた。
やはりソファーに横たわりながらなので、まるでマンガを読んでいるように見える。
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