8/10
前へ
/32ページ
次へ
「そっかー、それでも一桁なんだろうな。ずるいなー」 「こらこら、美月。人にズケズケとそういうこと聞くもんじゃないよ」   横から入ってきたのは彩佳。 彼女は優しい性格だから、私の異変に気付いたのかもしれない。 けれど、なんとなく察してそんなふうに気を使われることさえも、今の自分にとってはいやだった。 「彩ちゃんはどうだったー?」 「だから、聞かないでって言ったばかりでしょ」   呆れたように笑いながら、美月にゆるいゲンコツをする彩佳。 美月は、「はーい」と言って、今度は尚美の席のほうへ行った。 おそらく尚美にも順位を聞くのだろう。 「理穂子、顔色悪いけど大丈夫?」 「うん……大丈夫」   そう返しながらも、心は穏やかじゃなかった。 こんな成績、親が見たらどう言うんだろう。 不安で唾さえも飲みにくい。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

330人が本棚に入れています
本棚に追加