2月15日 日曜日 昼下がり(2)

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カイがダイニングを飛び出したあと、ぼくは、ぼくたちの部屋で、弟を問い詰めた。 「おまえ、知っとったな」 「知ってたわけやない。でも、勘付いてはおった」 「なんやねん、それ。胸糞わるい」 「ごめんな」 すでにカイは落ち着いていて、ぼくだけがまだ頭に血が登った状態だった。 「知ってること、教えろや。ぼくだけ知らんとか不公平やろ」 「ほんまに聞くんか?」 「当たり前やろ!」 「母さんは、もう父さんのことをひとかけらも愛してない。早い話が新しい男ができたんや。それもずっと若い男がな」 「ああ」 「女っていうのは、そういうもんらしいわ。そういう本能なんや」 「……わかった」 それから、ここからが笑えるところなんだと言わんばかりに、シニカルな笑顔を浮かべて話し出した。 「で、それなら、父さんがかわいそうかと言うと、そうでもない。父さんにも父さんの別れたい事情があって」 「もったいぶらんでええ」 「昔の恋人が末期ガンなんやと。終末医療というやつかな。よう知らんけど。ここ数ヶ月は文通で励ましていたらしいんやが、いよいよ、というわけや。身寄りがないらしい。最後のその時は一緒にいてくれへんか。と」 「恋人として?」 「相手さんはそうなんやろうな」 「父さんもやろ」 「せやな。父さんはその辺、不器用やからな」 「勝手がすぎひんか、二人とも」 「でも、二人の人生は二人の人生や」 カイは、どうしてそんなに大人なんだろうか。 双子なのに。 同じ家に住み、同じような生活を送ってきて、同じ顔をして、同じ親の元で育ったというのに。 ひとりだけすでに巣立ったかのような、背中をみせやがって。 ぼくだけが何の折り合いもつけられず、子どもみたいに駄々をこねている。
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