2月15日 日曜日 昼下がり(2)

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駅を降りるとすでに潮の香りがした。冬の風は冷たく、頬を刺す。 人通りの少ない道を海へ向かって進んだ。 次第にマストが見えてくる。 ぼくはベッドに腰掛け、言葉にできない気持ちに苛まれていた。 カイが頭の上から優しい声で言った。 「そんなに黙っていられるのが嫌か。そんなに裏切られるのが嫌か」 「当たり前やろ、誰だって嘘はつかれたくない」 「人は何でもかんでも正直に言えるもんやないで」 「わかってるよ」 ぼくはカイを見上げた。 弟は、悲しそうな顔で笑い、 「人は鏡やで、兄さん」と言った。 冬の浜辺は、ひどく寂しいものだった。 波の音がとても遠く聴こえる。 遠くに犬の散歩をしている人影が見える。 それだけだった。 海に来ても、昔の思い出の中に戻れるわけではなかった。 人もいなければ、音楽もない。 空は重たく曇っていて、夜に夕日が侵されていく。 ここには風の音と波の音があるだけだ。
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