2月15日 日曜日 昼下がり

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「え、マジっすか。先輩、そういうのは早く教えてくださいよ」 エイミが目をキラキラさせて話に食いついてくる。 「でも、先輩がマニキュア塗ってる姿とか見たくないわー。なんか、サブイボたつわー」 「ほっとけ」 彼女は屈託がない。表情がころころ変わる。そして、嫌味がない。 フタバはソプラノサックスを抱え、微笑んでいる。 もう16才だというのに、まだ中学生のような容姿とおとなしさから、時折、女の子に間違われている。 「フタバ、大丈夫?」 エイミがフタバを気遣う。 まるで姉弟のように見えるが、二人とも1年生だ。 「ありがと、エイミー」 「定演は、ウチもしよっかな、それ」 「馬子にもなんとやらやな」 「一応、女やねんけど」 フミオは同じ2年生として、サキソフォンパートを引っ張ってきた。戦友という言葉が一番しっくりくる。ぼくは部長として、彼女はセクションリーダーとして、部をまとめてきた。 このアンサンブルコンテストを終えると、1ヶ月後には、定期演奏会が待っている。 「楽しもう。結果は自ずとついてくる」 ぼくたち4人で頑張ってきた集大成だ。気負いはなく、よくも悪くも緊張感のない4人だ。 出番は約2分後。 1曲5分の間にすべてを出し切る。 練習は重ねた。やれることはやった。 目指すのは金賞。 考えるのは、すべて終わってから。そのあとでいい。
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