2月14日 土曜日 昼すぎ

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2月14日 土曜日 昼すぎ

午前中のパート練習を終え、昼休みのあとの眠気と戦いながら、ぼくたちは、指揮台を中心に合奏隊形に集合した。 「じゃあ、午後の練習を始めます」 「よろしくお願いします」 皆が着席し、指揮台に立つカムラはスコアをめくる。 タクトをもって顔を上げると、マリンバを一瞥して訊いた。 「ヒルマは?」 「あれ、まだ戻ってへんの?」 ティンパニのキッカが悠長な声で答える。 カムラはイラっとした様子で唇をきっと結んだ。 「イセリナもいません」 とホルンのリュウが告げた。 「え? イセも?」 「ちょっと」 「電話出ません」 パートリーダーは携帯電話を構えながら、苛立ちを隠そうともせずに言った。 「誰か。どこ行ったか知らん?」 音楽室はざわざわとした。皆、困惑していた。 定期演奏会まで時間がないというのに煩わしいことで時間を割きたくなかったのだ。 「あー、昼休みやけど、なんか半泣きで、走っていくの見たで」 ふたたびキッカが告げて、ぼくらはにわかに立ち上がった。 「事件やんけ」
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